和葉の胸の中がざわつく。


嫌な予感がする。

…そんなこと、あるわけないのに。


和葉はお茶の濃さなど考える余裕もなく適当に注ぐと、3つの湯呑みをお盆に乗せて、2人が待つ縁側へと急いで戻った。


『そんな地味な見た目じゃ、東雲様が違う女性に目移りしたっておかしくはないわよね』


こんなときに限って、乙葉の言葉を思い出す。


早くこの胸のざわつきを鎮めたい。


「和葉、早かったな。あの娘は先に寝たぞ」


そう言って、1人で待つ玻玖の姿を頭の中に思い浮かべる。


…大丈夫。

きっと大丈夫。


こんなの、ただの思い過ごしに違いない。


そう自分に言い聞かせるも、向かう足取りは速かった。


あの廊下の角を曲がれば、玻玖の待つ縁側。


「旦那様、お茶を――」


と声をかけようとしたとき、…和葉は目に飛び込んできた光景に息を呑んだ。