「東雲様、どちらへ!?」

「着物を着替えにいくだけだ」

「では、わたくしがお手伝いします!」

「必要ない。着物くらい自分で着替えられる」


ピシャリと部屋の障子を閉める玻玖。

その前で、悔しそうに口を尖らせる乙葉。


「まあ、東雲様ったら恥ずかしがられて〜」


そう部屋の中へ声をかけてみるも、玻玖からの返事はない。


「…乙葉。旦那様が困っていらっしゃるから、あまりつきまとうのは――」

「東雲様は困っているのではなく、照れていらっしゃるだけよ。それに、お姉ちゃんが東雲様に無関心だから、代わりにわたしがお世話してあげようとしているの!」


乙葉は怒ると、そのまま行ってしまった。


「わたしはべつに…、無関心というわけでは……」


そう乙葉の背中に向かってつぶやくも、当の乙葉には聞こえるはずもなかった。