月明かりに照らされる玻玖の素顔は、月に負けないくらい美しい。

その翡翠色の瞳にも目を奪われそうになる。


「…珍しい。今日は面を外されるのですね」

「ああ。今日は一段と明るい月だから、和葉の顔をよく見たい」


そう微笑む玻玖を見て、和葉はふと思った。


結婚初夜のときにも面を外した玻玖。

あのときは暗がりでよくわからなかったが、今月明かりではっきりと見える玻玖の素顔は――。


なぜか、どこかで見たことがあるような気がした。


しかし、どこで見たのかは思い出せない。


玻玖は右腕で和葉を抱き寄せ、やさしく頭をなでる。

心地よくて、和葉も玻玖の肩に頭を乗せて身を委ねる。


『わかったな、和葉』


和葉の胸の中には、短刀を持たせたときの貴一の重く冷たい言葉が今も深く刺さっている。