呆然とする和葉。

それに気づいた乙葉が和葉の肩をたたく。


「ヤダ、冗談よ!お姉ちゃんったら本気にしないでよね〜」


乙葉はケラケラと笑いながら、和葉をその場に残していってしまった。

残された和葉は、乙葉に心の内を引っ掻き回され悶々としていた。


『…瞳子……』


『瞳子』という女性の名前を呼ぶ玻玖の声が、和葉の頭の中に響く。


『…瞳子、…待ってくれ……』


数日前、縁側でうたた寝をしていたとき、たしかに玻玖はそう言ってうなされていた。


『もしかして、他に女の人がいらっしゃったりして…!』


心当たりがあり、乙葉のさっきの話が和葉の胸をぎゅっと締めつけた。


近頃外出の多い玻玖は、その『瞳子』という女性に会いに行っているのではないだろうか…。


和葉の心に不安の波が押し寄せる。