乙葉がいなくなって、貴一も八重も心配していたことだろう。

まさか、東雲家の屋敷に家出にきたとは予想外だろうが。


乙葉は、そのうち帰るという内容を書いていたため、貴一や八重が無理やり連れ戻しにくることもなかった。

そもそも、玻玖とは顔を合わせられないだろうから。


そして、乙葉がきて5日ほどがたった。


「和葉様、今日の夕食はさんまにいたしましょうか」


買い物から帰ってきた菊代が和葉に声をかける。


「旬もののさんまはこれで最後とのことなので、買ってまいりました」

「いいですね。それじゃあ、塩焼きにしましょうか。七輪はありますか?」

「七輪…でございますか?」

「はい。実家では、それでさんまを焼いていましたので」


洋食好きな乙葉でも、旬のさんまの塩焼きは大好物だった。