「あの娘…とは、乙葉のことですか?」

「ああ。きっと黒百合さんも心配していることだろう。しかし、前に啖呵を切った手前、俺から文を飛ばすのは気が引けるからな」

「旦那様が気に病まれることではありません…!乙葉にはそう伝えておきます」

「ああ。そうしてくれると助かる」


玻玖は、いつだって和葉のためを思っている。

さらに、乙葉の心配までも。


それなのに、自分はなんてことを考えているのだろうか――。


和葉は、短刀が仕込まれている着物の懐に手を添えた。


「どうかしたか?」

「い…、いえ…!」

「それでは、そろそろ寝るとするか」

「はい」


玻玖は和葉を部屋へと送り届けたあと、自分の部屋に戻るのだった。


翌日、乙葉は和葉に言われたとおり、黒百合家に嫌々ながら文を飛ばした。