「…酒か。あまり得意ではないのだがな」

「またまたご冗談を〜。ささっ!お注ぎいたしますので、どうぞどうぞ!」


気の進まないような素振りを見せる玻玖だったが、乙葉に言われて仕方なくおちょこを持つ。


「うん、なかなかうまい」

「よかった〜!さあ、もっともっと!」

「…いや、一杯で十分――」

「そんな遠慮なさらず〜!」


乙葉がそう言うものだから、結局玻玖はおちょこで十杯ほど飲まされていた。


「…飲みすぎたな」


床につく前、いつものように縁側で2人で月を見ていたとき、玻玖が疲れたように和葉にもたれかかる。


「…申し訳ございません、旦那様。乙葉が調子にのりすぎてしまって…」

「なにも和葉が謝ることじゃない。たしかにうまい酒だったから、俺もついつい飲んでしまっただけだ」