乙葉はフンッとそっぽを向いた。


突然やってきた乙葉との奇妙な暮らし。

黒百合家にいたときは、和葉の中では乙葉を脅威に感じていた。


しかし、貴一と八重がいない状況、しかも玻玖に守られている今の状況では、乙葉への感じ方も違った。


今思えば、なにをあんなに恐れていたのだろうと思うくらい。


夕食時。

いつもなら、和葉と玻玖のちょうどいい間の空いた会話が静かに聞こえるのだが、今日は違った。


「東雲様、素敵なお屋敷に住んでらしたのね！お庭も広くてうらやましいわ！」


乙葉のマシンガントークが炸裂していた。

玻玖は箸で煮魚の身を突つきながら、無言でこくんこくんと相づちするだけ。


「東雲様、お姉ちゃんのどこをお好きになられたの？正直なところ、やっぱりわたくしのほうが美貌では勝っていると思うのだけど？」