「…はい。我が妹ながら、本当に勝手で…。とは言いつつ、真意はお父様からなにか頼まれたのではないかと――」

「いや、それはないな」


玻玖は、障子越しに乙葉のいる客間に視線を移す。


「あの娘、考えるよりも先に感情のままに動くところがあるだろう?それに、思っていることが顔に出やすい単純な娘だ。そんな娘が、黒百合さんの悪だくみを秘めながら、あんなふうにあっけらかんとした演技ができるとは到底思えない」

「それは…たしかに…」

「呪術に関しては優秀でも、本来そこまで器用な娘でもないと見受ける。だから、それほど心配することもない」


てっきり、黒百合家の人間は追い出すものかと思っていたから、和葉は正直驚いた。

しかし、玻玖が強い口調で乙葉を追い出せと言ったとしても、和葉にはそれはできなかった。