和葉はごくりとつばを呑むと、乙葉が待つという玄関先へ向かった。


「あっ!お姉ちゃん、遅いよ〜」


和葉に気づくと、大きく手を振ってくる乙葉。


この様子からすると、どうやらつんけんとした乙葉ではなさそうだ。

いつ気分によって切り替わるかはわからないが。


それに、乙葉を送った車は帰ってしまい、辺りに人の気配もない。

本当に1人できたようだ。


なぜか、足元に大きな皮製のバッグを置いて。


「…急にどうしたの、乙葉」

「悪いんだけど、しばらくの間泊めてもらうから」

「えっ…!?」

「そういうことだから、よろしくね」

「ちょっと待って…!どういうこと…!?」

「あっ、そのバッグよろしくね。重たくて、わたくしには運べないから」


乙葉はバッグをその場に残すと、屋敷の中へと入っていった。