Fと書かれた鍵を私が持ち、Sと書かれた鍵を千鶴が持った。
背の高い卓己が灯台の門最上部を探ると、てっぺんの白いレンガが外れ、鍵と同じデザインの黄金に細かな宝石のちりばめられた錠前が現れた。
それは太く大きな真鍮の輪と連なる鎖に繋がれている。
いよいよこれからが本番だ。
「ねぇ、紗和ちゃん。これ、どうやって鍵回すの?」
鍵を手渡された千鶴が不安そうに言った。
「お父さまの日記によると、Fは最初、ファーストのFで、Sは二番目、セカンドのSみたい。曲がった矢印は回す方向で、分数は回す角度だと思う」
金の錠前に鍵穴は2つあって、私たちはそこへ同時に、見つけた金の鍵を差し込んだ。
「うわー。なんか、めっちゃドキドキする」
千鶴が長く黒い髪を揺らす横で、卓己は車椅子の充先輩を振り返った。
「なんかすみません。本当は充先輩たちのものだったのに」
「はは。気にするなよ。僕も一緒にドキドキしてるよ」
私と千鶴は互いの目を合わせ、ゴクリとうなずく。
「まずは私ね。右方向に1/4回転」
黄金の鍵から、カチカチという細かな振動が手に伝わる。
次に千鶴が左に1/2回転。
続けて私が3/4、千鶴が1/4を回したところで、私たちは再び視線を合わせた。
「これ、最後は同時にいっちゃっていいような気がしない?」
手に伝わる細かな振動がなくなり、明らかに鍵が軽くなっている。
「私もそう思う」
千鶴が私の意見に賛同した。
「じゃあちづちゃん。同時にいっちゃおうか」
「おっけーです!」
「せーの!」
カチリ! そんな音がして、金の錠前が跳ね上がった。
「開いた!」
危険がないようにと、重たい鎖を掴んでいた卓己が、慎重に錠前を外す。
「これ、すっごいデリケートな作品なんだからね。ぜ、絶対に乱暴にしちゃダメだよ紗和ちゃん!」
「それくらい分かってます!」
私は卓己から手渡されたそれを、充さんの手に戻す。
「充さん。灯台の門が、開きましたよ」
「ありがとう。これで僕の重荷もとれた」
卓己がつかんでいた鎖から手を放すと、それはゆっくりと巻き上がり門の上部に収まる。
「さぁ、冒険者たちよ。最初に宝を手にするのは誰かな?」
「勝手に入っちゃっていいんですか!」
私が勢いよく振り返ったら、充さんは笑った。
「僕は車椅子だしね。正直、中の様子は今でもよく覚えてる。僕が入れるのは1階部分だけ。三上恭平の絵があるのは、灯台の最上階だ。ここまで頑張ったんだから、紗和ちゃんたち三人でぜひ見てきて。絵を見つけたら、持って下りて来ていいから」
「あ、ありがとうございます!」
充さんは本当にうれしそうに、にっこりと笑った。
卓己を見上げると、彼も「うん!」とうなずく。
「あ、じゃあ私も行きまーす!」
千鶴も元気よく手を挙げる。
私たちは17年間閉じられていた門の扉を、ぐっと押し開いた。
背の高い卓己が灯台の門最上部を探ると、てっぺんの白いレンガが外れ、鍵と同じデザインの黄金に細かな宝石のちりばめられた錠前が現れた。
それは太く大きな真鍮の輪と連なる鎖に繋がれている。
いよいよこれからが本番だ。
「ねぇ、紗和ちゃん。これ、どうやって鍵回すの?」
鍵を手渡された千鶴が不安そうに言った。
「お父さまの日記によると、Fは最初、ファーストのFで、Sは二番目、セカンドのSみたい。曲がった矢印は回す方向で、分数は回す角度だと思う」
金の錠前に鍵穴は2つあって、私たちはそこへ同時に、見つけた金の鍵を差し込んだ。
「うわー。なんか、めっちゃドキドキする」
千鶴が長く黒い髪を揺らす横で、卓己は車椅子の充先輩を振り返った。
「なんかすみません。本当は充先輩たちのものだったのに」
「はは。気にするなよ。僕も一緒にドキドキしてるよ」
私と千鶴は互いの目を合わせ、ゴクリとうなずく。
「まずは私ね。右方向に1/4回転」
黄金の鍵から、カチカチという細かな振動が手に伝わる。
次に千鶴が左に1/2回転。
続けて私が3/4、千鶴が1/4を回したところで、私たちは再び視線を合わせた。
「これ、最後は同時にいっちゃっていいような気がしない?」
手に伝わる細かな振動がなくなり、明らかに鍵が軽くなっている。
「私もそう思う」
千鶴が私の意見に賛同した。
「じゃあちづちゃん。同時にいっちゃおうか」
「おっけーです!」
「せーの!」
カチリ! そんな音がして、金の錠前が跳ね上がった。
「開いた!」
危険がないようにと、重たい鎖を掴んでいた卓己が、慎重に錠前を外す。
「これ、すっごいデリケートな作品なんだからね。ぜ、絶対に乱暴にしちゃダメだよ紗和ちゃん!」
「それくらい分かってます!」
私は卓己から手渡されたそれを、充さんの手に戻す。
「充さん。灯台の門が、開きましたよ」
「ありがとう。これで僕の重荷もとれた」
卓己がつかんでいた鎖から手を放すと、それはゆっくりと巻き上がり門の上部に収まる。
「さぁ、冒険者たちよ。最初に宝を手にするのは誰かな?」
「勝手に入っちゃっていいんですか!」
私が勢いよく振り返ったら、充さんは笑った。
「僕は車椅子だしね。正直、中の様子は今でもよく覚えてる。僕が入れるのは1階部分だけ。三上恭平の絵があるのは、灯台の最上階だ。ここまで頑張ったんだから、紗和ちゃんたち三人でぜひ見てきて。絵を見つけたら、持って下りて来ていいから」
「あ、ありがとうございます!」
充さんは本当にうれしそうに、にっこりと笑った。
卓己を見上げると、彼も「うん!」とうなずく。
「あ、じゃあ私も行きまーす!」
千鶴も元気よく手を挙げる。
私たちは17年間閉じられていた門の扉を、ぐっと押し開いた。