「あ、ご、ゴメン! 他の用事入っちゃった」
「い、一緒に行こうって、言ったのに?」
「まだはっきり返事してたわけじゃなかったし!」
明らかに卓己の機嫌が悪くなる。
彼はそっぽをむいて、ボソリとつぶやいた。
「あ、あの人と、だったら……、誕生日、でも、すぐにおでかけ……出来るんだ……」
「仕事だから!」
卓己が面倒くさい。
いつも大概面倒くさいけど、最近は今まで以上に面倒くささが極だっている。
そうでなくても長い前髪で表情が見えにくいのに、ガッツリうつむいてしまうから、ますます顔色がうかがえない。
「仕事……って、なん、の、お仕事……なの?」
「そんなこと、卓己に関係ないじゃない」
「ダダビーズ……、の、アート展?」
その言葉に、私の怒りモードにスイッチが入る。
だから卓己は嫌いなんだ。
「なんで卓己が知ってんの? もしかして、卓己も行くつもりだったとか?」
「ぼ、僕は行かない! だ、だって、紗和ちゃんが僕と一緒に行くの、い、嫌がるの、知ってるから!」
「そうだよね! 私だって、絶対あんたとそんなとこ行きたくない。アート展だなんて!あんたと行くくらいなら、たとえおじいちゃんの絵だって、全然見に行かなくていいし!」
卓己が息をのむ。
しまった。言い過ぎた。
卓己はじっと体を強ばらせたまま、私を見つめる。
悪かったとは思うけど、反省はしていない。
「なによ。悪い?」
「パフェより、やっぱそっちだったんだ」
「そりゃそうでしょ」
着替えを取りだし、服を脱ごうとして、その手を止めた。
さすがにもう、卓己の目の前では着替えられない。
「おじいちゃんの作品が出品されるから、見に行ってくる」
「だって、僕が行くって言ったら、絶対行かないじゃないか」
「そうだよ。卓己となら行かない」
卓己は今にも泣き出しそうな顔を、横に向ける。
「でも、紗和ちゃんは本当は見たいんでしょ」
「見たいよ。見たいけど、卓己と一緒なら行かない」
「……。い、行ってくれば? その方、が、いいよ。絶対……」
ふいに彼は立ち上がると、逃げるように出て行ってしまった。
ドタドタと階段を駆け下り、玄関の扉が開いたかと思うと、ガチャリと鍵を掛ける音が聞こえる。
私はパジャマ代わりに着ていた長シャツを脱ぐと、それを思い切りベッドへ叩きつけた。
「い、一緒に行こうって、言ったのに?」
「まだはっきり返事してたわけじゃなかったし!」
明らかに卓己の機嫌が悪くなる。
彼はそっぽをむいて、ボソリとつぶやいた。
「あ、あの人と、だったら……、誕生日、でも、すぐにおでかけ……出来るんだ……」
「仕事だから!」
卓己が面倒くさい。
いつも大概面倒くさいけど、最近は今まで以上に面倒くささが極だっている。
そうでなくても長い前髪で表情が見えにくいのに、ガッツリうつむいてしまうから、ますます顔色がうかがえない。
「仕事……って、なん、の、お仕事……なの?」
「そんなこと、卓己に関係ないじゃない」
「ダダビーズ……、の、アート展?」
その言葉に、私の怒りモードにスイッチが入る。
だから卓己は嫌いなんだ。
「なんで卓己が知ってんの? もしかして、卓己も行くつもりだったとか?」
「ぼ、僕は行かない! だ、だって、紗和ちゃんが僕と一緒に行くの、い、嫌がるの、知ってるから!」
「そうだよね! 私だって、絶対あんたとそんなとこ行きたくない。アート展だなんて!あんたと行くくらいなら、たとえおじいちゃんの絵だって、全然見に行かなくていいし!」
卓己が息をのむ。
しまった。言い過ぎた。
卓己はじっと体を強ばらせたまま、私を見つめる。
悪かったとは思うけど、反省はしていない。
「なによ。悪い?」
「パフェより、やっぱそっちだったんだ」
「そりゃそうでしょ」
着替えを取りだし、服を脱ごうとして、その手を止めた。
さすがにもう、卓己の目の前では着替えられない。
「おじいちゃんの作品が出品されるから、見に行ってくる」
「だって、僕が行くって言ったら、絶対行かないじゃないか」
「そうだよ。卓己となら行かない」
卓己は今にも泣き出しそうな顔を、横に向ける。
「でも、紗和ちゃんは本当は見たいんでしょ」
「見たいよ。見たいけど、卓己と一緒なら行かない」
「……。い、行ってくれば? その方、が、いいよ。絶対……」
ふいに彼は立ち上がると、逃げるように出て行ってしまった。
ドタドタと階段を駆け下り、玄関の扉が開いたかと思うと、ガチャリと鍵を掛ける音が聞こえる。
私はパジャマ代わりに着ていた長シャツを脱ぐと、それを思い切りベッドへ叩きつけた。