「何見てたん」
前を向きながら。
あたしのほうには目もくれないで言う、乃蒼。
だから…本当は、分かってるのかもしれない。
あたしも乃蒼から目をそらして、先生のことを見つめながら答える。
「……当たったら痛そうだなって思ってみてた」
「はは、そりゃ痛いだろうなぁ」
一旦。
笑ってくれたから、話流すのに成功したかと思ったのに。
「てか、先生だろ」
「……」
先生だろって、なに。
…そんなに態度に表してるつもりないんだけど。
乃蒼には、去年も『お前って先生のこと好きなの?』って聞かれたことがある。
でも言ったらからかわれるってわかってたから、『そんなわけないじゃん』って嘘ついた。
それなのに……。
乃蒼もね。茉白と同じくらい容赦ない。
あたしが触れてほしくないことを平気で言ってくる。