「コーヒー…」
あたしがつぶやくと、先生は驚いた顔をする。
「お前、コーヒーとか飲むの?」
「飲むよ。いちばん好き」
好きだよ。
先生のことも。
「可愛い顔して意外だな」
また…。
思わせぶり、ダメだよ。
「じゃあ買ってくるからここで待ってて」
「え…いいの? あたし自分で行くよ」
「いいから。今日一日疲れたろ。居眠りしちゃうくらいな?」
口角を持ち上げて笑う先生。
かっこいい…。
居眠りなんかしないで、先生の姿を目に焼き付けたらよかった。
今日このまま帰ったら、土日を挟むから二日間会えない。
「ブラックか微糖どっちがいい?」
教官室のドアに手をかけた先生。
柔らかく細めるその目に、吸い寄せられる視線。
「微糖…」
ちょっとじゃなくて、もっとちょうだい。
甘い甘い、お砂糖みたいなふたりの時間。