ーーコンコン。




ドアをノックすれば、中から「…はい?」と不思議そうな声が聞こえた。



何度も聞いた。
何度でも聞きたい、大好きな声。




今日は。
中から、ドアを開けられる。





「…百瀬?」




ドアに手をかけたままあたしを見下ろす先生。
今日もジャージだ。
かっこいい…。




先生はあたしの髪やマフラーに降りかかった白い雪を見て、「え? 雪…?」と、慌てて窓の外を確認した。





「うわ、マジだ。…初雪」




ぼうっとなにかを考えてる様子の先生。
先生…? 今、誰のことを考えてる?





「先生。入って良い?」


「あ、どうぞ」




どうぞ、だって。
ちょっと他人行儀。



そんな先生も可愛くて、思わず笑ってしまうよ。





いつもの席。
先生の向かいに用意されたイスに座る。




「びっくりしたぁ。どうしたんだ、百瀬?」




先生、あのね。
今日は、大事なことを伝えに来ました。