「せんせ」
ちょっとちょっと。
手招きしてみる。
とくに用事ないけどね。
先生の顔、近くで見たい。
不思議そうな顔しながらも近くに来てくれる先生。
疑いたくなるほど優しいなぁ。
「どしたぁ?」
「呼んだだけ!」
先生を見上げて笑えば、「なんだそれ」と笑い返してくれた。
「百瀬は頑張り屋だなぁ」
「そうかな」
「今どき学校に居残ってまで勉強するやついないぞ」
うん。
いたら困る。
先生の目に、少しでも留まりたいから。
印象深い生徒として、刻まれて欲しいから。
「偉い?」
「えらいえらい」
そう言って、頭を撫でてくれた。
落ち着く…。
先生とふたりきりの空間。
大好き。
先生も、この時間も。
「英語かぁ。俺、超ネイティブだよ」
「…ホント?」
「嘘。英語がいちばん苦手だった」