「間宮さんはいろはさんのことが心配なんですね」

 と遥さんが笑顔で言った。


「まあ、幼い頃からかわいがってきたので、どこぞの知らない人にもらわれていくのは心配ですね」

 由希ちゃんの言葉に思わず私は横から口を挟んだ。


「由希ちゃん、もうこれ以上は……」

 すると遥さんはすぐに返答した。


「あなたの気持ちはわかりますよ。いい大人が女子高生と結婚しようだなんて、まわりの印象はあまりよくないでしょうしね」


 遥さん、そんなこと気にしてたんだ……。

 なんだか、ただ浮かれていた自分が情けなくなってきた。

 由希ちゃんはにこりともせずに遥さんに話し続ける。


「法律で認められてるから別にいいですけど」

「間宮さんは教師をされているんですね」

「ええ、そうです」

「余計に心配なのでしょう。教え子が三十路近い男と結婚することが」

「……まあ、はっきり言って、そうですね。普通にクラスの子にそういう話があったら驚きますからね」


 遥さんはふっと笑みをもらして、鋭い視線を由希ちゃんに向けた。


「親同士が認めていて、法律上なんの問題もない。何より、お互いに結婚の意思がある。それ以上に何か理由が必要ですか?」


 遥さんから放たれる余裕のある空気というか、大人のオーラのようなものに、私は圧倒されてしまった。

 由希ちゃんも少なからずそうなのか、彼女は黙ってしまった。