「わたし、これから頑張るから。大変なことがあっても全部受けとめて、精一杯やる。卒業するまで勉強もきちんとする。アルバイトもしようと思う」

 そう言うと、ふたりが同時に私を見た。


「あんた、バイトしたことないでしょ?」

 と由希ちゃんが言った。


「うん、だからやってみようと思って」

 そう言うと、遥さんが口を挟んだ。


「君はそんなことしなくていいんだよ。生活費の心配なんかいらないからね」

「でも、由希ちゃんの言うとおり、私は社会に出ていないから知らないことがたくさんあると思うんです。やっぱり働くことの大変さを知っておくべきだと思います」


 遥さんは困惑したような顔つきになった。

 私が働くことをあまりよく思っていないのだろうか。


「まあ、バイトくらいはしたほうがいいわね。甘ちゃんだから、多少の苦労をするのはいいことだと思うわ」


 由希ちゃんの厳しい言葉に私は苦笑するしかない。

 遥さんは「君がそうしたいなら」と言って笑顔になった。


 よかった。場の空気が少しよくなった……?


 遥さんと由希ちゃんは同時にぐいっとワインを飲んだ。

 そして、由希ちゃんは遥さんの顔をうかがう。


「秋月さんて結構飲みますよね。正直、酒の飲めない相手と結婚して大丈夫ですか?」

「関係ないですね。俺はひとりで飲むのが好きなので」

「ふうん」


 せっかく雰囲気を盛り返したと思ったのに、また悪くなりそうな予感……。