遥さんは動じることもなく、落ち着いた表情で淡々と質問に答えた。


「以前から、かえでさんと父とのあいだでそういう話があるのを知っていたので、自然とそうなるだろうと思っていたんですよ。昔、いろはさんと一度だけ会ったことがありますが、まさかこんなに素敵なお嬢さんに成長されているとは思わず、再会したときすぐに結婚を決めました」


 すらすらと話す遥さんに私は驚きと戸惑いで頬が熱くなって、まともに目を合わせることができなくなった。


 素敵なお嬢さんだなんて……照れる。

 私が熱くなった頬を撫でながら落ち着かせていると、由希ちゃんから遠慮ない言葉が発せられた。


「でも、いろはのこと何も知らないですよね?」


 その発言の後、一瞬だけ空気が凍りついたように感じた。

 少し不安になって由希ちゃんを見ると、彼女はほどよく酔っているのか顔を赤らめていた。

 それでも遥さんは動じることなく、淡々と返す。


「これから知っていけばいいだけのことですよ。もちろん、彼女のこともこれから知っていきますし」

「そういうのって普通、付き合ってから知っていくものじゃないですか?」


 私はなんだかハラハラしてきた。

 由希ちゃんはわざわざ相手に喧嘩を売るようなことは言わない人だと思うけど、思ったことをズバッと言っちゃう性格だから、ちょっと不安になった。


 遥さんの表情が、少し強張っているのを、私は悟ってしまった。