『いろは? どうしたー?』

 ぼうっとしていたら由希ちゃんの声がして、慌てて返事をした。


「な、なんでもないよ! じゃあ、遥さんに都合がいい日を聞いておくね」


 電話を切ったあと、しばらくぼんやり過ごした。


 彼とのキスのことばかり何度も思い出してしまう。

 そのたびに顔が熱くなってドキドキして、胸の奥がぎゅっと痛くなった。


「ああ……困ったよ」


 お風呂を済ませて髪を乾かして、明日の準備をして、ベッドにもぐり込む。

 恥ずかしくて布団をかぶったり、少し顔を出したりくり返した。


「結婚したら、あんなこと毎日するのかな?」


 大人のキスはまだ慣れない。

 けれど、嫌じゃない。


「ううん、結婚したらあれよりもっとすごいことを……」


 考えると涙が出るほど恥ずかしくなった。


「きゃああっ!」

 布団をかぶって悲鳴じみた声を上げた。



 キスよりすごいことなんて……。


 どうしたらいいのーっ!!!