「あ……はるか、さん」


 自分がこんなにも甘くて艶のある声を出せるなんて、知らなかった。


 1回目の触れただけのキスのときとはもちろん違う。

 2回目のキスに似ているけど驚きのあまり覚えていない。

 だけど今回は、体が感覚を覚えてしまった。


 彼は少し離れて、じっと私を見つめて、ぼそりと言った。


「綺麗」


 聞き間違えかなと思った。

 そんなこと、言われたことがないから。


「遥さん……」

 彼の顔を見ていると猛烈に恥ずかしくなって、つい顔を背けてしまった。

 すると彼は私の髪をさらりと撫でてから離れた。


「それじゃ、また連絡するね」

「は、はい……あっ、玄関まで送ります」


 部屋から出ていこうとする遥さんを、私は慌てて追いかけた。

 彼は両親に挨拶をしてから車で帰宅していった。


 部屋へ戻ると、由希ちゃんにさっそく彼の話をするため電話をした。


「いい人だよ。すっごく優しいの」

 私はそう言いながら彼とのキスを思い出してしまい、恥ずかしくなって言葉に詰まった。