「彼は俺の友人なので、ひと言いいですか?」

 と遥さんが言った。


 長門先生は驚いた表情で、黙ったまま遥さんを見ている。

 周囲の生徒たちがざわついた。

 そして司会者がまたもやネタが来たと言わんばかりに声を上げる。


「なんと、長門先生のご友人だった! これは思いがけない展開だ。カメラ!」


 カメラが長門先生に向けられる。

 だけど、彼はまったく動じることなく、真顔で遥さんを見つめた。

 それとは真逆で、遥さんは長門先生を穏やかな表情で見つめている。


 もしかして、威圧感満載で牽制するのだろうか。

 以前、伊吹くんにそうしたみたいに。


 そう思っていたけど、彼は予想外のことをした。

 ぐいっと私の肩をつかんで、抱き寄せて、彼は満面の笑みになった。

 それも、極上の微笑みだ。

 それを、長門先生に向けて、彼は言い放った。


「絢、俺は今すごく幸せなんだ。お前のおかげだよ。ありがとう」


 私は呆気にとられて遥さんを見上げた。

 すると、彼は眩しいくらいの笑顔を長門先生に向けていた。

 長門先生は、今まで見たこともないくらい、驚いた顔で絶句していた。