「そちらの彼女……えっと、いろはさん。彼の気持ちにお答えをどうぞ!」

 司会者のマイクが私に向けられた。

 同時にカメラもこちらへ向いて、周囲の生徒たちの視線も全部、私に向けられている。


 こ、こんな……みんなの前で……。

 でも、答えないと気まずい空気になっちゃうし、この盛り上がりを白けさせちゃダメだ。


「わ、わたしも……愛して、います」

 その瞬間、クラッカーがパーンと派手に弾けた。


「おめでとうございまーす!」

 大歓声と拍手の中、私と遥さんは♡型の風船をもらった。


 真っ赤なドレスを着た女子生徒は私たちふたりをくっつけて、カメラに顔を向けるように言った。

 とりあえず、笑っておいた。


「いやーん、羨ましいー!」

「あんなふうに愛されたい!」

「大人の男性って素敵!」


 女子生徒たちが盛り上がる中、私の知っている人たちは(小春以外)みんな静かだった。

 伊吹くんはよそを向いて黙り、あさひさんは真顔でパチパチと拍手をしていた。

 長門先生の顔は見ていない。


「では、想いが届いた遥さん。最後にメッセージをどうぞ」

 司会者にマイクを向けられると、遥さんはなぜかカメラではなく背後を振り返った。


 そこには、長門先生がいる。