「家族か……いいな、うん」

 遥さんは目線を窓のほうへ向けて、どこか遠くを見つめながらぼそりと言った。

 それがなんだか儚くて、もしかして彼は消えてしまうんじゃないかって思って、私はつい彼の腕をつかんだ。


「いろは?」

 遥さんは視線を私に戻して驚いた顔をした。

 私は彼の目をしっかり見つめて、言う。


「遥さん、わたし……」

 この気持ちを、どう言おうかと考える。

 考えて、恐る恐る口にする。


「遥さんがいなくなったらどうしようって思った」

 離れてからきちんと気持ちを整理してみたら、毎日あなたのことを考えるようになっていたの。


「連絡が来なくなって、きっと忙しいんだってわかってたけど、気になっちゃって……」

 不安で、いろいろと悪い想像ばかりして、今日だってあなたが死んじゃったらどうしようって思った。


「わたし……ずっと意地を張ってて、ひとりで大丈夫って思ってたけど」

 ひとりで生きていける力はつけたい。

 だけど、私はあなたと生きていきたいと思った。


「ほんとは、帰りたくて……」


 気づいたことがあるの。

 あなたへの気持ちは推しアイドルとは違う。

 初めて感じた胸の奥がぎゅってなる、熱くて痛くてたまらなく嬉しい気持ちは――。


「わたし、は……」


 ああ、好きなのね。