母から聞いた場所は大きな総合病院だった。

 面会受付で面会カードというものを首から下げて、広い病棟を歩きまわり『秋月遥』と書かれた病室を見つけて、扉の前で深呼吸した。

 もし、意識不明の状態とかだったらどうしようとか、記憶喪失になっていたらどうしようとか、体中包帯ぐるぐる巻きだったらどうしようとか、最悪な事態まで頭をよぎった。

 恐る恐る病室に入り、遥さんのベッドへ行くとそこには誰もいなかった。


「あ、れ……?」

 だけど、ちゃんと名前があるから間違っていない。


 まさか、急変して手術室とか、もしくは、もう……!

 手が、震える。

 やだ、遥さん……死なないで!!


「あら、どうかしましたか?」

 私が狼狽えていたせいか、看護師さんが声をかけてくれた。ので、飛びつくようにして訊ねた。


「秋月遥はどこにいるんですか? 無事なんですか?」

「あの、あなたは?」

「私は秋月の妻です!」

 迷うことなく、はっきりと、そう言った。

 かなり詰め寄ってしまったせいか、看護師さんは驚いた顔をしている。


「いろは?」

 と遥さんの声がして、病室の扉に目をやると、そこには彼が立っていた。


「あ……」

 久しぶりに見る遥さんは少しやつれていたけど、無事であることがわかって心底安堵した。

 安心しすぎて涙が出そうになった。