食事を終えると、おじさまはあまりゆっくりすることもなく帰ることになった。

 これから仕事があるらしい。

 母は玄関で見送ったけど、私は庭まで出て見送りをすることにした。


「ああ、ここでいいよ。迎えの車が来るからね」

 おじさまは門の前に立ち、微笑んで言った。

 まったく迎えの来る車が見えなったせいか、おじさまは私に話しかけてきた。


「遥とは、うまくやっているかね?」

 どきりとして一瞬固まった。

 だけど、変に思われてはいけないから、笑顔で答える。


「はい。だけど、遥さんは完璧すぎて、私なんか何もできなくて申しわけないくらいです」

 謙遜ではなく、本当のことだから悲しい。

 すると、おじさまは微笑んで言った。


「いいんだよ。いろはちゃんがいてくれるだけで私たちは安心だ」

「えっ?」

 どういう意味だろうと思った。

 私がいると安心だなんて……。


「あの、それってどういう……」

「遥は難しい子でね。親の私でもよくわからないんだ」

 おじさまは遠くを眺めて、どこか虚ろな表情で話す。


「しかし、いろはちゃんと会って結婚をしたら、ずいぶんと穏やかになったようだ」

 おじさまは少し嬉しそうに微笑みながら私に目を向けた。

 だけど私は逆に不安になっている。


「以前は穏やかではなかったということですか?」

 前の遥さんはもっと怖い人だったのだろうか。

 おじさまは苦笑しながら言う。


「そうではないが、ほとんど他人と言葉を交わさない、冷たい印象だったよ」


 遥さんに一体何があったのだろう?