「ううう、数学が……数学が、難しすぎる……!」

 私は今日も数学という意味不明な学問に悩まされていた。

 一体これは何の役に立つのだろうか。

 日常生活において、まったく使うことがないし、これを学んで何か得るものがあるのだろうか。


 はあ、とため息をつきながら本棚にある漫画を取り出した。

 勉強したくない、漫画が読みたいという欲求に耐えられない……!!


『数学の具合はどう?』


 うわあっ!

 このタイミングで来る!?


『順調です』

 と即座に返した。

 すぐに電話がかかってきたので、急いで応答した。


「はい……」

 スマホを持つ手に汗が滲んで滑りそうになる。


『勉強してる?』

「あ、うん……もちろん」

『漫画読んでたんだ』

「えっ!? どうして」


 どこかで見ているのだろうか。

 まさか、監視カメラとかあったりして。

 などと思いながら部屋中をぐるりと見まわした。

 電話の向こうで遥さんはクスクス笑った。


『いろはは隠しごとができないね』

「あ、わざとなのね。ひどい!」


 とりあえず漫画は本棚に収めた。