遥さんは少しのあいだ真顔で私を見ていたけど、急にふっと吹き出すように笑った。


「いろはの想像力は計り知れないな。俺が、君を、推しだと思っているのか?」

「そうだよ。だって、私も遥さんと同じことをしたの。翔真の写真をたくさん集めて、綺麗に保存して、それを眺めて楽しんでいたの。彼のことが知りたくてたくさんネットで情報を集めたし、彼の出てるテレビは全部録画したし、彼に関するネットの動画だって何回も見た」


 あなただってそうでしょう?

 私の写真を集めてあんなに綺麗に保存して、それを眺めて楽しんでいたんでしょう?

 こっそり私の情報を集めて楽しんでいたんでしょう?


「好きな相手のことを知りたいと思うのは本能的なものだ。それがアイドル相手であっても恋人相手であっても」


 遥さんは私から目をそらして言った。

 彼の言い分もわかる気がするけど、私はそんな気分になれない。


「私も、遥さんと結婚して、遥さんのことが知りたいなって、前は思っていたよ。だけど、今は知りたくない」


 あなたの心がわからない。

 私に見せているのが本当のあなたなのか。

 もっと他の顔があるのではないのか。

 それは、私に受け入れられるものなのか。
 

「遥さんのことを、これ以上知るのは怖い」