遥さんは真顔で私に接近してきた。
怖くなって後ずさりすると、背後のソファに当たり、それでも彼が近づいてきたので私はそのまま腰を下ろしてしまった。
遥さんは私に覆いかぶさるように、ソファに手をついて顔を近づけた。
「俺のことが嫌いになった?」
低い声で、脅すような目つきで、怖くて震えた。
だけど、怯んでは駄目だと気持ちを奮い立たせる。
「もともと、好きかどうかも、わかんない」
彼は私を睨むように眉をひそめる。
「遥さんは好きなアイドルに似ていて、最初はそれで惹かれて……あなたの優しさに甘えることができたから、私は勘違いをしちゃったんだと思う」
遥さんの鋭い目つきがわずかに歪む。
一瞬だけ、その瞳の奥がぐらりと揺れた気がした。
「勘違いでもいい。もう結婚しているんだから、余計なことを考える必要はないだろう。それに、君は恋愛も何かよくわかっていないだろ?」
彼は眉をひそめて、ただし口調だけは淡々と、そう言った。
確かに私は今まで恋愛をしたことがないし、いきなり結婚になって少し混乱していた部分はある。
だけど、これだけはわかる。
「だったら、私たちはお互いに勘違いしていたんだよ」
そう言うと、遥さんは険しい顔つきになった。
「遥さんだって、私のことを推しアイドルと同じような目で見ているんだよ」
あなたの好きは、恋愛じゃない。