このままじゃいけないと思った。

 これからのことも考えて、きちんと彼と話し合わなきゃいけない。

 だから、今日はまるで戦場に出る兵士のごとく、覚悟を持って彼の帰宅を待った。


 がちゃりとドアが開いて、遥さんの姿が見えると私は落ち着かない心情で迎えに出た。

 彼は私に気がつくとすぐに笑顔で「ただいま」と言った。


「おかえりなさい」

 緊張する。

 でも言わなきゃ。


「お話があるんですけど」

 遥さんは呆れたような顔つきで「また?」というような態度だった。

 でも、あとには引けない。


「私は、この結婚について、もう一度よく考えてみようと思うんです」

 遥さんは私から目をそらしてシャツの第三ボタンまで外した。


「考えてどうするの?」

 ため息まじりの、呆れ声だ。


「場合によっては……」

 別居も考えている、と言おうとしたら、すぐに強い口調で遮られた。


「離婚はしないよ」

 彼は落ち着いた表情で、冷静に言った。

 私は真逆で少し感情的になっている。


「離婚でなくても、少し離れたほうが……」

「離れても変わらない。少なくとも俺はね」

「でも、今の状態だと私は奥さんじゃなくて人形だよ!」


 つい声を荒らげてしまった。

 遥さんは眉をひそめて怪訝な表情で私を見据えた。