「そういえば先輩たち、もう進路は決まったんですか?」

 本来は受験生である私たちが、こうして遊んでいることに心配した後輩たちから、そんな質問が飛んできた。

 それにすぐ反応したのは小春だ。


「あたしはクリエイター系の専門学校へ行くつもり。デザインとかも学びたいしさ」

 後輩たちは小春が将来何になりたいとかそういう話に耳を傾けている。

 そのあいだ、私は深刻に考え込んでしまった。


 高校を卒業したら、私は結婚をするものだと子供の頃から母に言われてきた。

 だから、進学とか就職とかあまり考えたことがなかったのだ。


「ねえ、いぶっきーは?」

 小春の問いかけに、伊吹くんはさらりと答える。


「え? 普通にうちの大学に行くけど」

「えー、あんたみたいに授業さぼってちゃ、内申やばくない?」

「うるせぇなー。最近はちゃんと授業出てるよ」


 小春と伊吹くんのやりとりを聞いていたら、なんだか自分が恥ずかしくなってきた。

 わたし、誰かに甘えて暮らしていくことに、何の疑問も持たなかったんだ。


「秋月先輩は?」

 訊かれてどきりとした。

 どうしよう。嘘でも進学って言ったほうがいいのかな。


「いろはは絵の学校にでも行くんじゃない?」

 小春が助け舟を出してくれたので、とりあえずそうしておいた。