食事をしながら私はみんなの話をじっと聞いていた。

 そんなとき、男子同士が“推しの嫁”について話しているのを聞いた伊吹くんがいきなり質問を投げかけた。


「お前らの言う推しアイドルってさ、容姿だけよくても何もできない女だったらどうする? それでも結婚したいって思う?」

 彼のその問いにまわりも注目した。

 男子のひとりが真っ赤な顔をして答える。


「いいんですよ。推しなんで、何もできなくてもただそばにいればいいんですよ」

「そうそう。別に他のことは求めてないんですよ」

 彼らの言い分に伊吹くんは首を傾げた。

 すると女子たちが参入した。


「そういうものですよ、先輩! 見返りなんていらない。ただ、推しの写真を眺めて妄想するだけでもご馳走なんです!」

「飾らない自然な写真とか最高だよね。あたし、写真集も全部集めてるし!」

「グッズも全部集めてる!」

 女子たちがきゃあきゃあ騒ぐ中、伊吹くんは小春に目を向けた。


「お前もそうなの?」

「そりゃそうよ。ちなみに、あたしは琉星の写真いっぱい持ってるわよ。もちろんグッズもね。珍しい舞台裏シーンの写真とか、表では見られない写真とか、そういうの最高に萌えるのよ! いろはもそうよね?」

 小春が私に問いかけると、伊吹くんまで目線をこちらに向けた。


「えっ……うん、もちろん。私も翔真の写真いっぱい持って……」

 話していて、ふと思った。


 遥さんが私に向けている好意ってまるで……推しじゃない?