そんなの嫌って言うほど知ってる。

だって、あなたは……私が初めて好きになった人だもん。

三年生の東条 朝都。

この学園の者なら一度は聞いたことがあるだろう。

生徒会長、暴走族の総長、おまけに文武両道でイケメン。

そんな彼を知らない人なんていない。


「有栖梨耶、だっけ?風紀委員の副委員長さん?」


口角を上げて微笑む彼は見惚れてしまうほど綺麗だった。


「おーい?」


グイッと顔を近づけてきた先輩。

心臓がうるさい…。

これじゃあ、先輩に聞こえちゃう…ッ。


「なん、ですか?」


「やっと返事した。有栖は何に悩んでいるんだ?」


「直球ですね」と返すと「さぁな」と返ってきた。

それが面白くて、フッと笑ってしまった。


「お前は笑ってるほうが良い」


「先輩のおかげで悩み、吹っ飛んじゃいました…っ」


ありがとうございますと言う意味を込めて笑うと先輩は「そうか」と言った。

こんな機会二度と無いかもしれない。

それなら…。