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 脇田君の、爽やかな馴れ馴れしさに、
私がどんな態度を取るのかを見張るように、佳耶達は、遠巻きにして近付いて来ない。

 当の脇田君と言えば、
私が苦手にしているのをお構いなしに、
それとも空気が読めないのか、
とことん厚かましいのか、声を掛けてきた。それも意外なことを。

「あいつ、パシリにされてる?」
 脇田君に訊かれるまで気付かなかった。

 そう言えば、佳耶と杉原君が、
前にそんな事を、言っていたような気がするけど…。
指差した先に、目をやると、教室の反対側の端に、男子のグループが居た。
 見てみると、確かに、一人雰囲気が違って見えた。


 あれは棚橋君の事だったのか。



「さあ。気にならないけど…」
「そうか」
 脇田君は、私の答えに、酷くがっかりしたようだけど、そんな事、気になんかしていられない。
 どうだっていいよ。
 私は、全く興味を持てずに、教科書に目を落とした。佳耶達のお陰で、全く付いていけなくなった。
 私が溜息を吐くとほぼ同時に、
脇田君が突然立ち上がったかと思うと、走って行って棚橋君の腕を握った。
「行かなくていい」

 棚橋君は勿論、杉原君が驚いて固まっていた。



 でも、それは一瞬のこと。