「妹、里美っていうんだ」
 私が黙ってたら、克己がまた、話し始めた。
「里美?」
「そう。……驚いた?」
「うん」

「だから。オレはもう、里美が死ぬのを見たくないんだ」

『里美って呼びたいだけだろ?』
 以前に、里美が言った事を思い出した。

「里美は知ってたから」
「え?」
「三年に姉ちゃんが居るんだけど、オレが家で里美の話していたら興味持ったみたいで。なんだか、『里美に会った』って、言ってたから。で、その時に、妹のこと、聞いたらしくて…オレに訊いてきた」
「そう」

「だから、誕生日祝いなんて…さ、言ってくれて」
「なんで?」
「妹が死んだのが誕生日の直前だったから…。それ以来祝って貰った事ないって言ったから…」

 ああ。そうか。それを知っていたから、なんだ。
 ただの偽善なんて、それこそ私の思い込みだった。

 空回りだったんだ。ずっと。

 身勝手な僻み根性…だった。


「ごめんね、ごめんね」
 やっと、初めて心から思った。
「謝らなくていいよ。もう…」

  やっと、私は、色んな事を感じていた。