教室に行ってみて、驚いた。
 その、あんまりの馬鹿馬鹿しさに。

 幼稚園の行事かと思うような飾りつけで、黒板に、「かつみたんじょう日おめでとう」のPOP文字が有った。
       
 脇田君が絶句している所へ、棚橋君が宮村君に連れて来られた。

「しゃべったのか?」
 私を見ずに、脇田君がぽつりと言った。
「お前は違うと思ってたんだけどな」

 それこそ、馬鹿馬鹿しい。
 あなたなんかに、私の何が分かるって言うのよ。

「みんなに祝って貰った方が良いでしょ?」
 私は、尤もらしい事を、しれっと言ってやった。
 もちろん、佳耶の命令でやった、とも言えないのも確かだけど。
 なにより、私が、それらしい事を言ってやりたかったんだ。

「…そうだな。そうだ」

 素直と言うか、やっぱり、人がいい。
 私はうんざり教室を見渡した。こんなの良いわけないじゃない。

 そして。
 連れて来られた棚橋君はと言えば、教室の飾りを見るなり、脇田君の胸で号泣した。
 当の脇田君は満足気に、嬉しそうに棚橋君の頭なんか撫でているけど、その号泣の意味を知らない。

 見てご覧よ。
 杉原君が殺人鬼みたいな目で見ている。きっと、また、棚橋君は、ただじゃ済まないよ。