ただ、何故だか嫌われてはいないようなんだけど。
 と言うのも。

 ある日、脇田君は、棚橋君の誕生日を祝ってやると話してくれた。内緒だと念を押して。

 パシリに使われている棚橋君が可哀相だから?
 莫迦だ。
 そんなの、ただの自己満足じゃないか。
 更にむかむかしてきた。
 勝手にすればいい。

 そう思ったけれど、いっこうに、付き合う様子の無い私に、せめて、それに付き合って、情報を流せと、佳耶が言う。
 なんだ、そんな事? 
 いいよ。
 いつもに比べたら、簡単な事だ。

 脇田君なんか、騙したってかまわない。

 私に罪悪感なんか、全く無かった。



 その日、脇田君は早々に、教室を出て行った。
 もちろん私は、後を付いて行った。
 学校から少し離れた喫茶店に、入ろうとした所で、私の姿に驚いた。そうなったらもう、仕方ないと思ったのか、話してくれた。
 棚橋君一人を呼び出し、ここで祝ってやろうとしていたらしい。

 私と脇田君の二人が棚橋君を待っている所へメールが届いた。
『脇田を連れて、教室に来い』

「教室行ってみない?」
「教室ぅ?」
 脇田君が怪訝そうな顔をした。

「棚橋君、見てこようよ」

 棚橋君が来なければ意味が無いのだから。
 流石に、約束の時間が過ぎたのか、脇田君も仕方なく頷いた。