何を言っても無駄だと困却していたら、アーネストはフィリーネが自分の非を認めたと勝手に解釈したらしい。途端に勝ち誇ったような声を出す。

「ふはははは。やっと自分の非を認めたか。何も言えないようだな」
 フィリーネはふるふると首を横に振ってアーネストの言葉を否定した。

「いいえ殿下、わたくしは何も悪いことをしていませんわ。それに、まずは双方の話を聞いてから判断するのが妥当ではございませんか? ミリエラ様の話だけを信じるのは見解に偏りが生じます」


 言っても無駄とは分かっていても、考え直して欲しい一身で諫めてみる。
 しかしその言葉は、アーネストの逆鱗に触れてしまったらしい。

 たちまち彼の額に青筋が浮き出る。
「年上の俺に口答えするとは偉くなったものだな。自分のことは棚に上げ、こちらを批判するなど傲慢にもほどがある。その性格の悪さではいくら公爵家の令嬢とはいえ、誰もおまえと結婚したいだなんて思わないだろう。心の底から同情してやる!」

 最後に憐れみの言葉を吐き捨てられ、フィリーネはもうどにもできないと閉口した。