私は彼の名前を知らないし、部活だって知らない。

知っているのは"S高特進科"であることと、"2年A組"ということだけ。

別に知りたいとかは思っていないけれど、そりゃあいつかは知りたいわけで。

出会って1年が過ぎたけれど、未だに教えてもらえないまま。

いや、知ろうとしないの方が正しいか。


「ねぇ」


後ろを向いて彼に話しかける。
彼に話しかけたくて後ろを向く。


「どした?」
「A組って英単語の小テストやった?」
「うん」
「どこが出たか教えていただけませんか…」
「えー、やだよ。Cの平均点上がんじゃん」
「1個だけでいいから、ね?」
「………しょうがないなぁ」
「ありがとう!」
「あーこのページね?ここは……」

長いすらっとした手が伸びてきて、「これが出るよ」とわざわざ示してくれた。