6年前に別れたわけじゃないから、正確には復縁というのとは違うかもしれないけれど。
空白の6年間を埋めるように、私たちは私たちなりに努力した。

地方の大学院に進学が決まっていた私は、遠距離恋愛という形を彼に強いる形で、あの夜、お互いの想いを確かめ合った。

そして、私より過密スケジュールなのにもかかわらず、僅かな休みでも私が住んでる所に彼は何度も来てくれた。

ゆっくりと、じっくりと。
私たちの速度で歩んで来たけど。

この先の人生を考えた時に、『結婚』は出来たとしても。
『出産』は相当な覚悟と勇気が要る。

それは、6年前の主治医の説明でも理解していたことだけど。
医療系の大学に通っているということもあって、私は私なりに沢山学んだ。

そして、彼も医学生ということもあって、私よりも遥かに詳しく現実を目の当たりにしたと思う。

『結婚』は、それとなく仄めかして来るけど。
それを受け入れた先に『出産』があるのだとしたら、私は彼の希望を叶えてあげれないかもしれない。

私自身、匠刀との子供は欲しいけれど。
想像している以上にかなりのリスクがあると思うから。

「本音、言っていいの?」
「……いいよ」

ずっと避けて来た話題。
恋人として付き合うのとは次元が違う。

「無責任な言い方かもしんねーけど、俺は欲しい」
「っ…」
「そんでもって、俺は諦めてねーから」
「っっ」
「財前教授も言ってたけど、日々医学は進歩してるしさ。6年前より確実にリスク軽減されてると思うし」

再び赤信号で止まった。
前を見据えていた彼が、ゆっくりと助手席に視線を寄こす。

「何もしないで後悔するより、トライしてダメならダメで、そん時はそん時だろ。俺は桃子がいない世界では生きられないから、子供か桃子かなら、ぜってぇ桃子を取る」