「1軍男子って?」
「えっ、モモが初めて食いついた!!」
「……そういう意味で聞いたんじゃないから」

『合コン』という男女のお見合い的飲み会は把握してても。
実際に参加したことは一度もない。

匠刀を捨てるような形で逃げ出した桃子は、自分への罰を与えるかのように。
匠刀への操を立てている。

「白星会の医学生で、身長も顔面偏差値も超絶高くて、運動系サークルにも所属してるイケメン’sのことだよ」
「……白星会」

桃子が通っている聖泉女子大学は、白星会医科大学の系列の大学。
全国各地に系列の学校があるが、聖泉女子大学はその中の1つに過ぎない。

桃子の主治医である財前が勤務する医科大学の学生。
それも、医学科。

4年前、桃子が聖泉女学院から女子大へと内部進学を決めた同時期に、親から聞いた匠刀の進路。
『白星会医科大学の医学科』に進学するらしいと。

普段は匠刀に関する話題はタブーのようなもので。
桃子からも、両親からも話題には持ち出さなかった。

けれど、4年前の冬に、たった一度だけ。
虎太くんに頼まれたといい、匠刀の進路状況が伝えられたのだ。


もしかしたら、私のために医学部に進学を決めたのだろうか。
もしかしたら、私のその後を知りたくて、白星会を選んだのではないだろうか。

虫がよすぎるのは分かり切っていることなのに。
それでも、何となく。
匠刀が私のことを諦めずにいてくれているんじゃないかと思いたくて。

心の奥に閉じ込めたはずの想いが、じわりと溢れた気がした。