以前桃子から貰ったバイク雑誌の中に1枚の写真が挟まっていた。

その写真は、うたた寝している俺に寄り掛かっている桃子の自撮り写真。
そして、その写真の裏に、こう記されていた。



辛い時に優しく摩ってくれる手
心配そうに駆け寄って来る真剣な顔
心まで温めてくれるぬくもり
恥ずかしがって逸らす視線
わざと意地悪く装うぶっきらぼうな態度
微塵も不安にさせない一途な優しさ
ずっと変わらず『桃子』と呼んでくれたこと

全てが愛おしくて、大好きだよ



初めての手紙を読んだ時と同じで、涙が溢れて来る。

好きな子だから、当たり前にしていた1つ1つが、ちゃんと伝わっていた。

そして、『大好きだよ』という5文字が、俺を突き動かす。

『大好きだったよ』ではない。

二度と俺と会うつもりがないなら、あいつのことだから絶対に期待させるようなことは言わない。

すなわちそれは、桃子の中で、いつの日か……。
堂々と胸を張って会える日が来たらいいな、という気持ちが込められている。
そう俺は解釈した。

桃子は桃子なりに、自分自身にけじめをつけたに違いない。
誰かに支えられるだけの人生なのではなく。
自分の足でしっかりと生きることを選択した。

だったら、俺だって。
次会った時に、『離れるんじゃなかった』と後悔させてやる。

もっともっとカッコイイ男になって。
他の男なんて目に入らないくらい、イケてる男になってやる。



「親父っ」
「おっ、どうした」
「塾通わせて」
「は?」

クリスマスの夜から、廃人と化していた匠刀が、17歳の誕生日のこの日。
漸く息を吹き返した瞬間だった。