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「匠刀っ!!」
「……っんだよ」
「どこ行ってたんだよっ」
「あ?……晃司んちだけど」
「モモちゃんんから、手紙が来てんぞっ」
「は?………あっ」

兄貴が差し出して来たのは、クリスマスデートの時に桃子と一緒に書いた『みらい郵便』の手紙だった。
有名漫画家の絵ハガキにメッセージを書いて、それをオプションで売られていた白い封筒に入れたもの。

だから、兄貴にしたら、桃子から手紙が来たのだと思ったのだろう。

「サンキュ」
「嬉しくないのか?」
「……嬉しいよ」
「そうは見えないぞ」
「悪い、一人で読みたいから」
「……おぅ」

兄貴から封筒を受け取り、自室へと。

久しぶりに見た、桃子の字。
筆圧が弱く、小さめな字。

愛らしい控えめな桃子の笑顔が浮かんだ。

手が震える。
この手紙を書いた時、既に桃子の中では俺の前から去ることを決意していたわけだから。

桃子の部屋にあった手紙には『別れよう』だとか、『さようなら』とは書いてなかったが。
もしかしたら、この手紙にはそれらが書いてあるかもしれない。

その現実を目の当たりにして、俺は正気でいられるだろうか。

見なければ、まだ何とかなる気がして。
見たい気持ちと、見たくない気持ちが複雑に交差する。

小一時間ほど握りしめていた俺は深呼吸し、意を決して鋏で封を切った。