持ってきた花火に火を付ける。七色の光を放ち、煙でいっぱいになった。心をはしゃぎ立てるのには十分だ。

「綺麗だね」
涼しくなってきた夜に、澄んだ空気も気分がよかった。 シューシューと音を立てる花火は、まるで流れ星だ。

「花火って蛍のお尻みたい」
都会育ちのハルカは、蛍を見たことがあるのだろうか。

「蛍。いつか一緒に見に行こうね」
僕はふと思った。これは欺瞞なのではないかと。でも、嘘でも答えることにした。

「二人一緒の時間を過ごして、思い出たくさん作って。これからもずっと一緒に居たい。1番近くにね」

良かった。笑っていてくれている。

「移植を待つ間、入院中にまたこうやって2人で花火をしようよ。何回でも火をつければ、ほらずっと綺麗だよ」

周りのみんなも。僕たちも。本当は分かっていた。ハルカの命の火が、もう消えかかってるってことを。

だからこそ現実に目を背け、花火を馬鹿みたいに無邪気に楽しんだ。子供のように。

カップルごっこだったかもしれない。それでも良かった。