それは千秋の母親の声だった。
必死に呼びかけているその声に思わず足が止まる。

今は中に入るべきじゃないと4人は団子状態になって廊下に立ち止まってしまった。
中から聞こえてくる泣き声に嫌な予感が胸を支配する。

嘘でしょ。
まさか、そんな……。

奈穂は胸の前でギュッと手を組む。
お祈りをするようなポーズになって室内の様子をうかがった。

先生は千秋が事故に遭ったとしか説明してくれなかった。
どれくらいの怪我なのか、無事なのかはなにもわからない。

もしかしたら生徒には聞かせられなくて伏せていたのかもしれない。


「あぁ……千秋! 目が覚めたのね!」


その声に4人同時に顔を見合わせていた。
千秋が目を覚ました。