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この街で一番大きな総合病院は豊の父親が外科医として務めている場所でもあった。


「こんな時間にどうしたんだ?」


できれば豊の父親に見つからないように病室まで行きたかったけれど、エレベーターへ向かう途中でバッタリ会ってしまった。
白衣を来た豊の父親は聡明そうな顔立ちをシていて凛々しさを感じる人だった。


「お父さんごめん。どうしてもお見舞いに行かないといけないんだ」


詳細をここで伝えることはできないけれど、父親は豊の真剣さを組んでくれた。


「わかった。でも見舞いに手ぶらというわけにはいかないんじゃないか? 少しここで待っていなさい」


そう言い残すと、10分ほどして戻ってきた。
その手にはカゴに入ったフルーツが握られている。


「売店で買ってきたものだけど、なにもないよりはマシだろ」

「ありがとう」


フルーツのカゴを受け取り、4人でエレベーターに乗り込んだ。
千秋が入院している病室は予め電話して聞いていた。

フルーツの爽やかな香りとは裏腹に4人の心臓は緊張で早鐘を打っていた。