やってしまったことを、なかったことにはできない。
その罪の重さが一浩の胸にのしかかってきていた。


「私は……」


奈穂が静かに口を開いた。


「本当は見てたの、全部」


豊が万引をしたことも、一浩が最初のイジメをはじめた瞬間も。
そして豊が珠美を好きなことにも感づいていた。

この中のひとつでもなにか違う行動を起こしていれば、千秋が交通事故に遭うこともなかったかもしれないのだ。


「なんだ、結局見られてたのか」


豊が重たいため息と共に呟いた。


「うん。だけど私には千秋みたいな勇気がなかった。だから、見なかったフリをしたの」


見て見ぬ振りをするのは一番たちが悪い。
誰かがそう言っていたことを思い出して奈穂はうつむいた。

自分はこの4人の中で最も安全圏にいて、そして卑怯な存在だと感じた。