「それが私の痛み」


千秋は奈穂の目の前に立っていて、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。
これが、千秋の痛み。

千秋の指先は奈穂の首元を差している。
こんなに痛くて、こんなに苦しい毎日を送っていたんだと思うと、涙が出た。


「ごめん……ごめんなさい。ごめんなさい千秋」


謝ってもどうにもならないほどの痛み。
全身に寒気がして強い孤独を感じる。

それは途絶えること無く奈穂を襲う。


「ごめんね千秋。ごめんなさい」


ボロボロと涙を流して何度も何度も謝罪を口にする。
それでも許されることじゃないということはわかっている。

でも言わずには居られなかった。


「ごめんなさい……」


ハッと息を飲んで目を開けるとそこは見慣れた自分の部屋だった。