その結果、千秋は交通事故に遭ったんだ。


「ごめんね千秋。私はやるべきことをしなかった。自分の中でなかったことにして、記憶に蓋をしてた」


ナイフを握りしめた手がそっと持ち上がる。
怖くてどうしようもなくて、体中がガタガタと震えだす。

サッと血の気が引いて、座っているのに倒れてしまいそうだ。
それでもこうするしか道は残されていない。

時計の針はもうすぐ5時というところまで進んでいた。
外の景色は随分と白んできて、よく見えるようになってきている。

もう少しで朝が来る。
ここで私が自殺すれば、朝が来る……。

恐怖でヒクヒクと喉が引きつり、変な声が漏れる。
千秋はさっきからなにも言わない。

チョークも動かない。
けれど見ていることだけは確実だった。