そう思うと怖くて唇を引き結んでいた。
急いで靴を履き替えて千秋に背を向ける。

千秋はなにかいいたそうな顔をしていたかもしれないけれど、そこから逃げるように大股で歩き出した。
背中に千秋の視線を感じる気がして、早足になる。

校門を出るころにはほとんど走っていた。
そうして家が見え始めた頃、奈穂はようやく足を緩めてふりむいた。

そこには帰宅途中の他の学生の姿が見えるだけで、千秋の姿はなかったのだった。